消毒液の特有の匂い、規則的な機械音、そして窓の外に広がる、どこか遠い世界のような日常の景色。
大切な人が入院したと聞いた時、私たちの心には心配とともに、「何かできることはないか」という焦燥感が押し寄せます。
「退屈な時間を少しでも明るく過ごしてほしい」
「治療の辛さを、ほんの一瞬でも忘れてほしい」
そんな願いを込めて選ぶ「一冊の本」は、単なる暇つぶしの道具ではありません。それは、あなたが相手を想う「時間」そのものであり、言葉にできない「祈り」の代わりでもあります。
しかし、その一方で、入院中の差し入れほど「センス」と「配慮」が問われるものもありません。
良かれと思って選んだベストセラーが、実は相手にとって精神的な負担になったり、病院という特殊な環境では不適切な内容だったりすることは、悲しいことに少なくないのです。
私自身、かつて入院していた時期があります。
その時、友人から差し入れられた一冊の本に救われた経験と、逆に「ありがたいけれど、今はこれを読む気力がないな…」と申し訳なく思った経験、その両方があります。
また、ライターとして多くの書店員さんや医療従事者の方にお話を伺う中で、「差し入れの正解」には明確なロジックがあることも見えてきました。
この記事では、入院中の差し入れに最適な「明るい本」の選び方を、心理学的な側面や病院のリアルな環境を踏まえて徹底的に解説します。
さらに、具体的なおすすめ本をジャンルごとに深掘りして紹介し、最後には「本以外の選択肢」まで網羅しました。
これを読み終える頃には、あなたの手元には、相手の顔色をパッと明るく輝かせる「運命の一冊」が見つかっているはずです。
ポイント
- 死、病気、別れを連想させるテーマやタイトルの本は、たとえ名作でも厳禁
- 寝ながらでも片手で持てる文庫本や軽量な本を選択し、ハードカバーは避ける
- 「頑張れ」と励ます自己啓発本よりも、現実逃避できる「笑い」や「癒やし」を重視
- 薬の副作用や痛みで集中力がなくても、パラパラと読める短編やエッセイが安心
- 中古本は感染症対策や衛生マナーの観点からNGのため、必ず新品を用意する
- 文字を読むのが辛い時は、写真集や「大人の塗り絵」、オーディオブックも検討する
なぜ、入院中の差し入れに「本」が選ばれるのか?
具体的な選び方に入る前に、少しだけ「なぜ本なのか」という本質的な話をさせてください。
お見舞いの品といえば、お花や果物、お菓子などが定番ですが、現代の入院事情においては、これらが制限されるケースが増えています。
例えば、生花。
かつてはお見舞いの代名詞でしたが、現在は花粉によるアレルギーや、花瓶の水を替える手間の問題、さらには感染症対策(花瓶の水中の細菌リスク)のため、生花の持ち込みを全面的に禁止している病院が非常に増えています。
次に、食べ物。
食事制限がある患者さんはもちろん、治療の影響で味覚が変わっていたり、匂いに敏感になっていたりと、食べ物を楽しめない状況は多々あります。賞味期限のプレッシャーも、相手に気を遣わせてしまう要因の一つです。
その点、「本」はどうでしょうか。
アレルギーの心配もなく、賞味期限もありません。
読みたくなければ置いておけばいいですし、何より、本には「時間を味方に変える力」があります。
入院中、最大の敵は「退屈」と、それに伴う「ネガティブな思考」です。
天井を見つめているだけの時間は、どうしても不安なことを考えてしまいます。
そんな時、ページを開くだけで別の世界へ連れて行ってくれる本は、心のシェルター(避難所)になり得るのです。
だからこそ、私たちは慎重に選ばなければなりません。
そのシェルターが、安全で、心地よく、明るい場所であるように。
まずは確認!お見舞いで避けるべき「タブー」と「マナー」
本を選ぶ前に、まずは「これだけはやってはいけない」というタブーを深掘りして確認しましょう。
「マナー」というと堅苦しく聞こえますが、要は「相手の心と体を守るための防波堤」です。
「死」「病気」「別れ」を連想させるタイトル・内容はNG
これは基本中の基本ですが、実は最も難しいポイントでもあります。
なぜなら、感動的な名作やドラマ化された話題作の多くは、クライマックスで「命のやり取り」が描かれることが多いからです。
例えば、タイトルに「死」「別れ」「終わる」「消える」「涙」「余命」といった単語が入っているものは、無意識のうちに相手の死生観を刺激します。
たとえ内容がハッピーエンドだとしても、表紙のタイトルを見るたびに、自分の病状と結びつけて不安になってしまう可能性があるのです。
また、意外な落とし穴が「医療ドラマの原作」や「病院が舞台のミステリー」です。
普段なら楽しめるエンターテインメントでも、実際に自分が病院のベッドにいる時に、小説の中で「医療ミス」や「院内の人間関係のドロドロ」を読むのは、リアリティがありすぎてストレスになります。
私が以前、書店員さんに相談した際には、「帯(オビ)の言葉にも注意してください」とアドバイスをいただきました。
タイトルは明るくても、帯に「号泣必至!」「衝撃のラスト、主人公の運命は!?」といった煽り文句があると、心が弱っている時は「悲しい結末なのかな…」と警戒してしまいます。
可能であれば、購入時に帯を外してもらうか、あまりに刺激的な言葉がないか確認することをおすすめします。
中古本は絶対に避ける!新品を用意するのが鉄則
「家に面白かった本があるから、それを持っていこう」
「絶版のレアな本を古本屋で見つけたから」
その気持ちは素敵ですが、入院中の差し入れとしては不適切です。
理由は大きく分けて2つあります。
一つは、衛生面のリスクです。
病院は、手術直後の患者さんや、免疫抑制剤を使用している患者さんなど、感染症リスクに対して非常に敏感な場所です。
古本は、不特定多数の人が触れており、目に見えない手垢、ホコリ、カビ、ダニなどが付着している可能性があります。
健康な時には気にならないレベルの汚れでも、入院中のデリケートな体には脅威になりかねません。
もう一つは、「気(き)」の問題です。
少しスピリチュアルに聞こえるかもしれませんが、お見舞いには「新しい気を入れる」という意味合いもあります。
使い古されたものよりも、パリッとした新品のページを開く時の高揚感こそが、相手への「早く元気になってね」というメッセージになります。
「あなたのために、わざわざ選んで買ってきた」というプロセス自体が、相手の自己重要感を高め、免疫力を上げる手助けになるのです。
プレッシャーになる「意識高い系」や「過度な励まし」
「入院期間を有効活用して、資格の勉強でもしたら?」
「この本を読んで、マインドセットを変えてみない?」
ビジネスパーソン同士の場合、こうした親切心からビジネス書や自己啓発本を選びがちです。
しかし、これは時に「凶器」になります。
病気や怪我で入院している時、人は多かれ少なかれ「社会から切り離された疎外感」や「生産性のない時間を過ごしている罪悪感」を抱えています。
そんな状態で、「困難に打ち勝て」「休むな、行動しろ」「成功者の習慣」といった本を渡されると、どう感じるでしょうか。
「病気で寝ている自分はダメな人間だ」
「早く復帰しないと居場所がなくなる」
そんな焦りを助長させてしまいます。
入院中は、治療すること、体を休めること自体が「立派な仕事」です。
「頑張るための本」ではなく、「今のままのあなたでいいんだよ」と肯定してくれる本、「何もしない時間を愛でる本」を選んであげてください。
相手に負担をかけない「本の選び方」4つの基準
タブーを回避した上で、次に考えるべきは「読みやすさ」という物理的・身体的なハードルです。
健康な私たちがカフェで読書をするのとは、全く状況が異なることを想像してみましょう。
【重さ】腕が疲れない「文庫本」か「ソフトカバー」
まずシミュレーションしていただきたいのが、「寝たまま読む」という姿勢です。
点滴の管が腕に繋がっていたり、術後の痛みで寝返りが打てなかったりする場合、本を持ち上げる腕の力は極端に弱くなっています。
ハードカバーの単行本は、通常300g〜500gほどの重さがあります。
これを片手で支え続けるのは、健康な人でも疲れる作業です。ましてや、本が手から滑り落ちて、顔や術後の傷口に当たってしまったら大惨事です。
おすすめは、やはり「文庫本」です。
軽くて小さいため、片手でページをめくることができ、読まない時も枕元に置いて邪魔になりません。
もし、どうしても新刊の単行本(ハードカバー)を渡したい場合は、電子書籍という選択肢も視野に入れるか、あるいは見舞いの時にあなたが少し読んで聞かせる、くらいの配慮があってもいいかもしれません。
【内容】集中力がなくても読める「短編」か「エッセイ」
入院中は、痛み止めや抗生物質などの薬の副作用で、頭がぼーっとしたり、眠気が続いたりすることがよくあります。
また、頻繁な検温、回診、食事、検査などで、まとまった読書時間を確保しにくい場合もあります。
そんな環境下で、登場人物が何十人も出てくる長編小説や、複雑な伏線回収が必要なミステリー、論理的な思考を要する哲学書を読むのは至難の業です。
「前の章の内容、なんだっけ?」と何度も読み返すことになり、それがストレスになって読書自体をやめてしまうことも。
そこでおすすめなのが、「短編集(ショートショート)」や「エッセイ」です。
1話が5分〜10分で完結するものであれば、隙間時間に読むことができ、途中で眠ってしまっても、また次の話から新鮮な気持ちで読み始められます。
「読了しなければならない」という義務感から解放してあげることも、優しさの一つです。
【視覚】文字を追うのが辛い時は「写真集」や「画集」
さらに体調が優れない時、あるいは普段あまり活字を読まない方への配慮として、「文字を読まなくてもいい本」は非常に強力な選択肢です。
白い壁、白い天井、カーテンで仕切られた狭い空間。
色彩に乏しい病室にいると、視覚的な刺激に飢えてきます。
そんな時、美しい風景写真集、愛らしい動物の写真集、美味しそうな料理のイラスト集、あるいは美術館の図録などは、眺めるだけで脳を刺激し、リフレッシュさせてくれます。
文字情報というのは、脳で処理するのに意外とエネルギーを使います。
一方で、ビジュアル情報は直感的に右脳に働きかけるため、疲れた脳でも受け入れやすいのです。
「本=読むもの」という固定観念を捨てて、「本=眺めて楽しむインテリア」という視点で選んでみるのも素敵です。
【文字サイズ】老眼や疲れ目への配慮
意外と見落としがちなのが、文字の大きさ(フォントサイズ)です。
ご年配の方はもちろんですが、若い方でも、病室の照明が暗かったり、コンタクトレンズではなく度の合っていないメガネで過ごしていたりするため、細かい文字を読むのが億劫になることがあります。
文庫本の中でも、出版社によって文字の大きさは異なります。
また、最近の文庫本は「文字を大きくしました」と謳っているレーベルも増えています。
書店で本を選ぶ際は、実際にページを開いてみて、「少し離しても読めるか」「行間は詰まりすぎていないか」を確認してみてください。
行間がゆったりしている本は、それだけで圧迫感がなく、リラックスして読むことができます。
【ジャンル別】入院中の差し入れにおすすめの「明るい本」完全ガイド
ここからは、具体的な書籍を挙げながら、おすすめの理由と「どんな人・どんな時に向いているか」を深掘りして解説します。
迷ったらこのリストの中から選べば、少なくとも「大失敗」は防げるはずです。
くすっと笑えて心が軽くなる「ユーモアエッセイ」
笑いには、免疫細胞(NK細胞)を活性化させる効果があると言われています。
また、笑っている瞬間だけは、痛みや不安を忘れることができます。
おすすめ①:『もものかんづめ』(さくらももこ)
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どんな本?:国民的アニメ『ちびまる子ちゃん』の作者による、伝説的エッセイ集。日常の些細な出来事、自身の健康法(怪しい民間療法など)、家族の話などが、独特のシニカルかつコミカルな視点で描かれています。
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おすすめ理由:「水虫」や「健康食品」など、体にまつわる話も多いのですが、あまりにもバカバカしくて(褒め言葉です)、自分の病気が深刻なことに思えなくなってくる不思議な力があります。文庫版は軽く、どこから読んでも爆笑できます。
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注意点:術後の傷が痛む時に読むと、笑いすぎて傷口に響く可能性があるので、「痛みが引いてから読んでね」と一言添えるとユーモアになります。
おすすめ②:『いのちの車窓から』(星野源)
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どんな本?:音楽家・俳優として活躍する星野源さんのエッセイ。華やかな芸能界の話だけでなく、人見知りな性格、日々の生活での葛藤、そして彼自身が経験した大病(くも膜下出血)からの復帰についても、重すぎないトーンで触れられています。
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おすすめ理由:著者が大病を乗り越えているという事実は、入院中の読者にとって静かな希望になります。しかし、決して「克服記」のような押し付けがましさはなく、あくまで淡々とした日常の尊さが描かれています。文章のリズムが良く、ラジオを聴いているような感覚で読めます。
眺めるだけで旅気分!美しい「世界の絶景・風景写真集」
身体の自由が利かない入院中、最も欲するのは「外の世界」の空気です。
想像力の中で世界旅行へ連れ出してくれる写真集は、最高の「ドア」になります。
おすすめ③:『死ぬまでに行きたい!世界の絶景』(詩歩)
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どんな本?:世界中の息をのむような絶景を集めた、大ベストセラー写真集。
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おすすめ理由:とにかく写真が美しく、ページをめくるたびに鮮やかな色彩が目に飛び込んできます。「退院したら、ここに行ってみようかな」「こんな景色があるんだ」という未来へのワクワク感を引き出してくれます。文字情報として「行き方」や「予算」も載っていますが、基本的には写真を眺めるだけで完結します。
おすすめ④:『未来ちゃん』(川島小鳥)
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どんな本?:昭和の面影を残す田舎で、おかっぱ頭の女の子「未来ちゃん」の日常を撮り下ろした写真集。
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おすすめ理由:鼻水を垂らし、泣き、笑い、食べる。生命力の塊のような子供の写真は、見ているだけで理屈抜きに元気が湧いてきます。「美しい」だけでなく「生きている」というエネルギーを感じられる一冊です。説明文が一切ないため、活字を読みたくない時に最適です。
続きが気になって時間を忘れる「ハートウォーミング小説」
体調が安定しており、退屈を持て余している時期には、物語の世界に没入できる小説が一番です。
ただし、サスペンスやホラーは避け、読後感が温かいものを選びましょう。
おすすめ⑤:『木曜日にはココアを』(青山美智子)
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どんな本?:川沿いの桜並木のそばにある喫茶店「マーブル・カフェ」を舞台に、一杯のココアから始まる12色の物語。
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おすすめ理由:短編集の形式をとっていますが、それぞれの物語が緩やかに繋がっています。悪い人が出てこない、誰も死なない、そして最後は心がじんわり温まる。入院中のデリケートな心に、そっと寄り添うような優しさがあります。青山美智子さんの作品はどれも「癒やし」の成分が高く、ハズレがありません。
おすすめ⑥:『ツバキ文具店』(小川糸)
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どんな本?:鎌倉で、手紙の代書屋を営む主人公の物語。様々な依頼人の想いを、文字にして届ける過程が丁寧に描かれています。
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おすすめ理由:鎌倉の美しい情景や、美味しそうな食べ物の描写が五感を刺激します。「手紙」というアナログなコミュニケーションの温かさが、孤独になりがちな入院生活に染み渡ります。続編もあるので、気に入ったら差し入れの第2弾として続ける楽しみもあります。
活字が苦手でも大丈夫!大人のための「コミックエッセイ」
漫画は、活字よりも情報処理が楽で、映像よりも自分のペースで進められる、非常に優れたメディアです。
ただし、少年漫画のようなバトルものや、続きが気になる長編ストーリー漫画よりも、1話完結のコミックエッセイが適しています。
おすすめ⑦:『すーちゃん』シリーズ(益田ミリ)
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どんな本?:独身、30代〜40代女性の等身大の悩みや日常を描いた4コマ漫画形式の物語。
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おすすめ理由:決して派手なことは起きません。でも、「あー、わかる」「そういうことあるよね」という共感が詰まっています。自分だけが悩んでいるんじゃない、みんなそうやって生きているんだ、という安心感を与えてくれます。絵柄もシンプルで余白が多く、目に優しいのが特徴です。
おすすめ⑧:『大家さんと僕』(矢部太郎)
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どんな本?:お笑い芸人の矢部太郎さんと、彼が住むアパートの大家さん(ご高齢の女性)との交流を描いた実話漫画。
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おすすめ理由:上品でマイペースな大家さんとの会話に、心が洗われます。時間、老い、別れといったテーマも含まれていますが、全てが優しいユーモアで包まれており、悲壮感はありません。「誰かと話したいな」と思わせるような、温かい人肌を感じる作品です。
【番外編】「読む」以外の選択肢も視野に入れる
「本」というカテゴリを少し広げて、読書以外の楽しみ方を提案するのも、気が利いた差し入れになります。
没頭して時間を消す「大人の塗り絵」や「パズル」
本を読む気力はないけれど、手は動かせる。そんな時に最強の暇つぶしになるのが「パズル系」の本です。
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大人の塗り絵:『ひみつの花園』など、緻密な植物や模様を塗る本。無心になれるため、マインドフルネス(瞑想)に近いリラックス効果があります。色鉛筆とセットで渡すのがマナーです。
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数独(ナンプレ):数字を埋めるパズル。論理的な思考を使いますが、言語野を使わないため、本を読むのとは違う脳の使い方ができ、気分転換になります。
耳で聴く本「オーディオブック」のギフト
目が疲れる、寝たきりで本を持てない。そんな方には、「聴く読書」を提案してみてはいかがでしょうか。
AmazonのAudibleやaudiobook.jpなどのサービスでは、プロの声優や俳優が本を朗読してくれます。
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渡し方:プリペイドカードやギフトコードを送るか、もし親しい間柄なら、設定を手伝ってあげるのも良いでしょう。
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メリット:目を閉じたままでも楽しめます。また、個室でない場合、周囲の雑音(同室者のいびきや面会の話し声)を遮断するためにイヤホンをする患者さんは多いため、その時間を読書に変えられるのは画期的です。落語や漫才のオーディオコンテンツも、笑えるのでおすすめです。
「センスがいい」と思われるプラスアルファの気遣い
最後に、選んだ本を渡す際に、もう一歩踏み込んだ心遣いを添えてみましょう。
これであなたの差し入れは、単なる暇つぶしグッズから、心のこもった特別なギフトに変わります。
帯やしおりで「なぜこの本を選んだか」を一言添える
本をそのまま渡すのも良いですが、「なぜこの本をあなたに選んだのか」という理由を一言添えるだけで、受け取った時の嬉しさは倍増します。
例えば、綺麗なポストカードやしおりに、
「表紙の猫が、あなたの家の猫ちゃんに似ていたから」
「このエッセイを読んで笑ったら、元気が出たと言っていたのを思い出したから」
「何もしない時間を楽しんでほしくて、写真集を選びました」
とメッセージを書いて挟んでおきます。
こうすることで、「適当に選んだのではなく、私のことを考えて選んでくれたんだ」という気持ちが伝わります。
本を読む前の導入としても素敵ですし、読み終わった後もそのしおりが手元に残り、入院中の励みになるかもしれません。
渡す時の「魔法の言葉」
渡す時の言葉選びも重要です。
「これ読んで元気出してね」と言うと、相手によっては「元気を出さなきゃいけない」というプレッシャーになります。
おすすめは、
「これ、もし気が向いたら、暇つぶしにパラパラ見てみて」
「面白かったから置いておくね。読まなくても全然大丈夫だから」
というスタンスです。
「読まなくてもいい」という逃げ道を用意してあげることで、相手は心理的な負担を感じずに本を受け取ることができます。
この「軽やかさ」こそが、入院中の相手に対する最大の思いやりです。
どうしても迷ったら「雑誌」や「電子書籍ギフト」も選択肢
「相手の好みが全くわからない」
「読書が好きかどうかも怪しい」
そんな時は、無理に書籍を選ばない勇気も必要です。
最新の週刊誌、ファッション誌、趣味(車、カメラ、料理など)の雑誌などは、情報が細切れで読みやすく、読み捨て感覚で扱えるため、実は非常に気が利いた差し入れになります。
また、最近ではLINEやメールで送れる「図書カードNEXT」や「Amazonギフト券」も人気です。
これなら、相手が自分のスマホやタブレットで、今一番読みたい本(漫画や小説など)を自分で選ぶことができます。
「味気ないかな?」と思うかもしれませんが、入院中は荷物が増えることを嫌う方もいます。
退院時の荷造りの手間を増やさない、という現実的な配慮にもなりますので、関係性によっては、こうしたデジタルな差し入れも検討してみてください。
入院中の知人への明るい差し入れ本まとめ
入院中の差し入れ本選びは、相手への想像力と思いやりの深さが試される場面です。
しかし、難しく考えすぎる必要はありません。
「あなたが苦痛を感じず、少しでも心地よい時間を過ごせますように」という願いが根底にあれば、その気持ちは必ず伝わります。
最後に、今回のポイントをおさらいしましょう。
まとめ
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避けるべきタブー:「死・病気・別れ」の描写、中古本、プレッシャーになる自己啓発書。
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物理的な配慮:片手で持てる「文庫本」や「ソフトカバー」。文字の大きさもチェック。
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体調に合わせた選定:
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集中力がない時 → 短編集、エッセイ
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文字が辛い時 → 写真集、画集、塗り絵
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暇を持て余した時 → ハートウォーミングな小説
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活字が苦手な人 → コミックエッセイ
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心遣い:「読まなくてもいいよ」という言葉を添えて渡す。
本は、閉じればただの紙の束ですが、開けばいつでも、どこへでも羽ばたける翼になります。
不自由な入院生活の中で、あなたの選んだ一冊が、大切な人の心に自由な風を送り込むきっかけになりますように。
ぜひ、書店で実際に手に取り、相手の顔を思い浮かべながら、素敵な一冊を見つけてください。