全国のデイサービス、特別養護老人ホーム、グループホームなどで日々ケアに奮闘されている職員の皆様、毎日の業務本当にお疲れ様です。
さて、カレンダーをめくれば、もうすぐそこには「3月3日、ひな祭り」が待っています。
施設のレクリエーション担当の方、今年の壁面飾りの計画は順調に進んでいますでしょうか?
正直なところ、この時期になると私の胸の内には、ある「苦い記憶」が蘇ります。
あれは私がまだ新人だった頃のこと。
「利用者様に喜んでもらいたい!」という一心で、徹夜して画用紙を切り抜き、完璧なお雛様セットを一人で作って壁に貼ったのです。
翌朝、それを見たある利用者様が一言。
「あら、幼稚園みたいで可愛らしいこと」
その言葉に悪気がないことは分かっていました。でも、私の心はズキンと痛みました。
「可愛らしい」という言葉の裏にある、「子供っぽい」「私たち向けではない」というニュアンスを感じ取ってしまったからです。
さらに、利用者様を「お客様」にしてしまい、「一緒に作る楽しみ」を奪ってしまっていたことにも気づかされました。
「毎年、折り紙でお内裏様とお雛様を作るだけになってしまっていて、正直マンネリ気味…」
「日々の業務が忙しすぎて、凝った準備をする時間がどうしても取れない」
「利用者様に『幼稚だ』と思われない、プライドを尊重したデザインにしたい」
今、画面の前で頷いている皆様。その悩み、痛いほどよく分かります。
かつての私と同じように、時間と予算、そしてクオリティの狭間で揺れているのではないでしょうか。
この記事では、そんな皆様の悩みを根本から解決するために、私の数々の失敗と成功の経験から導き出した「高齢者施設のひな祭り壁面飾り」の決定版ノウハウを余すところなく公開します。
低予算・短時間で準備ができるのは当たり前。
さらに、リハビリ専門職の視点を取り入れた「機能訓練としての制作レク」の進め方や、飾るだけで会話が広がる「回想法」への応用、そしてご家族が涙して喜ぶ写真撮影のテクニックまで、1万文字を超えるボリュームで徹底解説します。
この記事は単なる「作り方の紹介」ではありません。
ひな祭りという行事を通じて、利用者様の笑顔と尊厳を守り、職員の皆様自身の負担も軽くするための「魔法のガイドブック」です。
ぜひ最後まで読み進めて、今年のひな祭りを過去最高のものにしてください。
この記事のポイント
- 原色を避けて「和柄」「千代紙」を使うことで、子供っぽさを払拭し大人の品格を演出する
- 「ちぎる」「丸める」「選ぶ」動作を意図的に組み込み、認知機能と手指機能のリハビリを行う
- 新聞紙やお花紙、トイレットペーパーの芯など、施設にある廃材を「宝の山」に変える
- 画鋲を使わず「養生テープ+強力磁石」で固定し、落下事故をゼロにする安全対策を徹底する
- 車椅子の目線(床から110cm)に合わせ、顔周りが明るくなる「レフ板効果」を狙った撮影スポットを作る
- 制作から撤去までをスムーズに進めるための「4週間逆算スケジュール」を活用する
脱マンネリ!高齢者が喜ぶ「幼稚にならない」壁面飾りのコツ

毎年恒例の「色画用紙で作ったお雛様と赤い毛氈(もうせん)」。
もちろん伝統的で素敵ですが、何年も同じパターンが続くと、作る職員側も、そして見る利用者様側も、どうしても新鮮味が薄れてしまいます。
「またこれか」という空気感は、敏感な利用者様にはすぐに伝わってしまうものです。
また、高齢者施設での壁面飾りで最もデリケートな問題が、「幼稚に見えないようにする」という点です。
人生の大先輩である利用者様に対して、まるで保育園のお遊戯会のような、原色たっぷりの可愛すぎる飾り付けは、時に「バカにされている」と感じさせてしまうリスクがあります。
ここでは、マンネリを打破しつつ、施設を「品のある和の空間」に変えるためのデザインの鉄則を深掘りします。
原色よりも「和柄・千代紙」で品格と懐かしさを演出
まず最初に見直すべきは、素材の「色使い」と「質感」です。
一般的な12色入りの色画用紙セットに入っている「真っ赤」「真っ青」「真っ黄色」といった原色。
これらは視認性は高いですが、そのまま使うとどうしても「子供の工作」感が強くなってしまいます。
大人の落ち着いた雰囲気を演出するための特効薬、それが「和柄(わがら)」と「千代紙(ちよがみ)」です。
今は100円ショップ(ダイソーやセリアなど)でも、友禅柄、鹿の子(かのこ)絞り、麻の葉模様など、本格的な和柄の折り紙やデザインペーパーが手に入ります。
これらを着物の部分や背景の一部に使うだけで、作品のグレードが一気に上がります。
なぜ「和柄」が効果的なのか?
これには深い理由があります。
現在の80代、90代の女性利用者様の多くは、若い頃に着物を日常的に着ていたり、嫁入り道具として大切に扱っていたりした世代です。
「矢絣(やがすり)」や「青海波(せいがいは)」といった伝統的な文様は、彼女たちの記憶の奥底にある「若くて輝いていた頃の自分」を呼び覚ますスイッチになります。
実際、私が担当したある女性利用者様(重度の認知症があり、普段は発語が少ない方)が、壁飾りに使った千代紙を見て、突然こう仰ったことがありました。
「あら、これは『亀甲(きっこう)つなぎ』ね。私の娘の祝い着も、こんな柄だったわ」
その瞬間、その方の目に光が宿り、そこから娘さんの話をたくさんしてくださったのです。
ただのデザインとしてではなく、「記憶を刺激するツール」として和柄を取り入れてみてください。
平面だけでなく「立体感」を出して視力の弱い方にも配慮

壁面飾りというと、どうしても「切った紙を壁に糊で貼る」という平面的な構成になりがちです。
しかし、加齢により視力が低下している利用者様(特に白内障の方など)にとっては、平面だけの飾りは背景と同化してしまい、全体がぼんやりとして何が飾ってあるのか認識しづらいことがあります。
そこで意識したいのが「3D(立体)視点」です。
壁から物理的に飛び出すような厚みを持たせることで、そこに「影」が落ちます。
この影と光のコントラストがあるおかげで、視力が弱い方でも輪郭をはっきりと捉えることができ、「あそこに何かある」と認識しやすくなるのです。
具体的なテクニック:
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ペーパーフラワーの活用: お花紙(薄葉紙)を5〜6枚重ねてジャバラ折りにし、ふんわりと開いた花を配置する。これだけで3〜5cmの厚みが出ます。
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スポンジ両面テープ: パーツを貼る際、普通の糊ではなく、厚みのある「クッション付き両面テープ」や、小さく切った段ボール片を挟んで貼ることで、壁から数ミリ浮かせます。これだけで影ができ、高級感が出ます。
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異素材ミックス: 紙だけでなく、フェルト、布、毛糸、綿など、質感の違う素材を組み合わせます。光の反射率が変わるため、視覚的なメリハリが生まれます。
お雛様だけじゃない!「吊るし雛・桃の花」で壁一面を春に
「お雛様の顔を描くのが苦手…」
「バランスが崩れて、なんだか怖い顔になってしまった」
職員さんから最も多く寄せられる悩みが、この「人形の顔問題」です。
顔のパーツのバランスは非常に繊細で、少し目が離れただけで表情が崩れ、全体のクオリティを下げてしまいます。
そこでおすすめなのが、無理に人形本体(特に顔)を作ろうとせず、「吊るし雛(つるしびな)」や「桃の花」「扇(おうぎ)」といったモチーフで壁一面を構成するアプローチです。
吊るし雛は、江戸時代から続く伝統的な飾りで、「衣食住に困らないように」との願いを込めて、小さな人形や縁起物を吊るすものです。
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桃: 邪気を払い、延命長寿を願う
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巾着: お金がたまるように
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扇: 末広がりに栄えるように
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三角(薬袋): 病気に無縁でありますように
これらのモチーフであれば、顔を描く必要がないため「失敗」という概念がありません。
壁の上部から麻紐や毛糸を垂らし、そこに利用者様と一緒に作った色とりどりのモチーフを貼り付けていけば、まるで柳川(福岡)や稲取(静岡)の有名な吊るし雛祭りのような、圧巻の景色が広がります。
「お雛様の人形そのもの」がいなくても、これらのモチーフが持つ意味を伝えることで、十分に、いやそれ以上に深いひな祭りの心を表現することができるのです。
【型紙不要】利用者様と作る参加型レク!簡単アイデア3選

職員が残業して一人で飾りを作るのではなく、日中のレクリエーションの時間を使って利用者様と一緒に作り上げる。
これこそが、デイサービスや施設における理想的な形であり、最も効率的な業務の進め方です。
しかし、麻痺がある方(片麻痺)、握力が弱い方、認知症の方など、様々な身体状況の方がいらっしゃる中で、全員が参加できる工程を考えるのは至難の業です。
ここでは、難しい型紙やハサミを使わず、「丸める」「ちぎる」「選ぶ」といった単純動作を中心に、リハビリ効果も期待できる具体的な制作アイデアを3つ、詳細なマニュアル形式でご紹介します。
1. 指先のリハビリに!お花紙を丸めて作る「巨大な桃の木」
一つ目は、お花紙を丸めて貼っていくだけで完成する「巨大な桃の木」です。
点描画の要領で、小さな丸い紙の集合体で大きな絵を描く手法です。
【準備するもの】
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お花紙(ピンク、濃いピンク、白、薄い黄色)
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模造紙(白または薄い水色)
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茶色の画用紙(木の幹用)
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液体のり、またはスティックのり
【事前準備(職員)】
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模造紙を数枚つなぎ合わせ、壁面のサイズに合わせた大きなキャンバスを作ります。
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茶色の画用紙を手でちぎり、模造紙に「木の幹」と「枝」を貼り付けておきます。あえて手でちぎることで、樹木のゴツゴツした質感が出ます。
【当日の手順(利用者様へのアプローチ)】
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丸める: 利用者様に、お花紙を一枚ずつ渡し、手のひらや指先を使ってクシャクシャと丸めていただきます。
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声掛けのコツ: 「美味しい桃ができるように、優しく丸めてくださいね」「お団子を作るみたいにコロコロしてください」
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リハビリ視点: 指先で小さく丸める動作は「巧緻性(こうちせい)」の訓練になります。片麻痺の方には、健側の手とテーブルを使って押し付けるように丸める方法を提案します。
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貼る: 丸めたお花紙の底に糊をつけ、枝の周りに隙間なく貼っていきます。ピンクの中に白や黄色を混ぜることで、立体感と深みが出ます。
【このレクのメリット】
単純作業なので、普段レクに参加しにくい重度認知症の方でも「これならできる」と没頭しやすいのが特徴です。
また、テーブルに山積みになったピンクの紙玉を見るだけで「わあ、綺麗ね」と会話が弾みます。
全員の分を集結させて一つの大木が完成した時の達成感は格別です。
2. 新聞紙とハギレで!貼るだけで豪華な「立体つるし雛」

二つ目は、施設に必ずある新聞紙と、手芸で余った布のハギレや千代紙を使ったアイデアです。
廃材を利用しているとは思えないほど、豪華で重厚感のある飾りができます。
【準備するもの】
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新聞紙(大量)
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和柄の布のハギレ、または千代紙
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セロハンテープ
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色画用紙(黒、赤、金など)
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毛糸や麻紐(吊るす用)
【事前準備(職員)】
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布や千代紙を、15cm×15cm程度の正方形にカットしておきます。
【当日の手順(利用者様へのアプローチ)】
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芯を作る: 新聞紙を半分〜1/4サイズに切り、それをギュッギュッと強く握って「お団子」や「卵型」の固い芯を作ります。
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リハビリ視点: 新聞紙を強く握りつぶす動作は、握力を維持・強化する「粗大運動」として非常に有効です。ストレス発散の効果もあります。「ギュッと力を入れて、固くしてくださいね!」と励まします。
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包む: 作った新聞紙の芯を、用意した布や千代紙で包み込みます。裏側をセロハンテープで止めます。
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装飾: 色画用紙で作った細い帯を真ん中に巻けば「手まり」、上にリボンをつければ「巾着」、三角に包めば「薬袋」になります。
【このレクのメリット】
コストはほぼゼロ円。
新聞紙の芯が入っているおかげでボリュームがあり、壁に貼った時に圧倒的な存在感を放ちます。
一つ一つが軽いので、万が一落ちてきても怪我をする心配がありません。
3. 紙皿とフェルトで簡単!華やかな「扇(おうぎ)の壁画」
三つ目は、100円ショップの紙皿を使った「扇」の壁画です。
紙皿のカーブとエンボス加工(縁の凸凹)を活かすことで、簡単に本格的な扇子が作れます。
【準備するもの】
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紙皿(直径18〜20cm程度のもの)
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フェルト、千代紙、和柄の折り紙
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金色の折り紙
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ボンド、はさみ
【事前準備(職員)】
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紙皿をあらかじめ半分にカットしておきます。これだけで扇の形になります。
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フェルトや千代紙を、ちぎり絵用に細かく切っておくか、あるいは特定の形(桜の花びらなど)に切っておきます。
【当日の手順(利用者様へのアプローチ)】
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選ぶ: 利用者様に、土台となる紙皿と、貼り付ける飾り(フェルトや千代紙)を選んでいただきます。
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リハビリ視点: 「どっちの色がいいですか?」「どの柄が好きですか?」と選択を促すことは、脳の前頭葉を刺激し、自己決定の喜びを感じていただく大切なプロセスです。
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デザインする: 選んだ素材を紙皿の上に自由に配置し、ボンドで貼り付けます。
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仕上げ: 扇の要(かなめ/根元の部分)に、小さく切った金色の折り紙を貼って引き締めます。
【このレクのメリット】
個性が強く出る作品なので、完成後に「〇〇さんの扇は粋ですね」「〇〇さんのは可愛いですね」と相互の鑑賞会が盛り上がります。
壁にランダムに散らすだけで、モダンアートのようなおしゃれな空間になります。
飾るだけではもったいない!「回想法」への応用テクニック

壁面飾りが完成し、壁に飾ったら終わり…ではありません。
実は、この壁面飾りこそが、普段会話が少ない利用者様から言葉を引き出す、最強の「回想法ツール」になるのです。
飾った後の、会話を引き出す具体的なスクリプト(台本)をご紹介します。
会話のきっかけを作る「質問リスト」
職員が一方的に「綺麗ですね」と言うのではなく、利用者様の記憶にアクセスするような質問を投げかけてみてください。
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ひな人形について:
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「〇〇さんが小さい頃は、どんなお雛様を飾っていましたか? 7段飾りでしたか?」
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「お雛様の片付けが遅れると、お嫁に行き遅れるなんて言いましたよね。あれ、本当だったんでしょうか?(笑)」
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食べ物について:
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「ひな祭りのご馳走といえば、何を食べましたか? ちらし寿司? それともハマグリのお吸い物?」
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「甘酒は飲みましたか? 白酒でしたか?」
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「雛あられの色には意味があるそうですね。桃色は桃の花、白は雪、緑は新緑だそうですよ」
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家族について:
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「娘さんやお孫さんの初節句の時は、どんなお祝いをしましたか?」
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「誰が人形を飾る役でしたか? お父様でしたか?」
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聞き取りのポイント:「肯定」と「共感」
利用者様の中には、「うちは貧乏だったから、お雛様なんてなかったよ」と寂しそうに仰る方もいるかもしれません。
そんな時は、「そうでしたか、大変な時代でしたよね」とまずは共感し、「その分、お母様が美味しいご飯を作ってくれたりしませんでしたか?」と、別の温かい記憶へ誘導してみてください。
壁面飾りを指差しながら、「あそこに貼ってある千代紙の柄、昔の着物に似ていませんか?」と問いかけるだけで、30分以上昔話に花が咲くことも珍しくありません。
これこそが、飾りを作った本当の意義なのです。
記念撮影で笑顔に!写真映えするレイアウトの秘訣

せっかく素敵な壁面飾りができたら、その前で利用者様の記念写真を撮りましょう。
この写真は、ご家族への報告や、施設のお便り、広報誌に載せるための貴重な素材になります。
しかし、いざ撮影してみると「顔が暗い」「背景がごちゃごちゃして人物が目立たない」といった失敗もよくあります。
プロのカメラマンも意識している、人物を最高に引き立てるレイアウトと撮影の秘訣を伝授します。
車椅子の高さに合わせて「顔周り」を明るく飾る
高齢者施設での撮影で最も重要な変数は「高さ」です。
飾り付けをする際、健康な大人が立って作業をしていると、つい自分の目線の高さ(150cm〜160cm付近)を中心に飾りを作ってしまいがちです。
しかし、利用者様の多くは椅子や車椅子に座って過ごされています。
座った状態の目線の高さは、床からおよそ 100cm〜120cm 程度です。
鉄則:
壁面飾りを作る際は、この「座った時の顔の位置」にメインの飾りが来るように配置してください。
さらに重要なのが、顔が来る位置の近く(左右や下)に、白、薄いピンク、クリーム色など、明るい色の飾り(例えば白い桃の花や、薄いピンクの雪洞など)を配置することです。
これがカメラで言うところの「レフ板」の役割を果たします。
光を反射して、利用者様の顔のシワや影を飛ばし、顔色をパッと明るく健康的に見せてくれるのです。
逆に、顔のすぐ近くに黒や濃い紺色などの暗い色があると、顔色まで沈んで見えてしまうので絶対に避けましょう。
余白を恐れない!「抜け感」を作って主役を引き立てる

「せっかくだから豪華にしよう!」と張り切るあまり、壁の隙間がないくらいビッシリと飾りを貼ってしまうことはありませんか?
実はこれ、写真撮影の観点からはNGです。
背景が情報過多になると、主役である利用者様が背景に埋もれてしまい、どこを見ればいいのか分からない散漫な写真になってしまうからです。
写真映えを狙うなら、あえて「余白」を作る勇気を持ちましょう。
おすすめの構図:
利用者様が座る中央部分(幅1m×高さ1.5mくらいの範囲)は、あえてスペースを空けておきます。
そして、その周りを囲むように飾りを配置する「フレーム(枠)構図」を作ります。
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上部:桃の木の枝をアーチ状に伸ばす
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左右:吊るし雛を垂らす
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下部:菜の花畑のような黄色い飾りを置く
こうすることで、撮影した時に自然と視線が中央の利用者様に集まり、「その人が主役」の素晴らしい一枚が撮れるようになります。
「抜け感」を作ることは、手抜きではなく、主役を引き立てるための高度な演出テクニックです。
撮影小道具(フォトプロップス)を用意する
壁だけでなく、手で持てる「撮影小道具」を用意すると、写真のバリエーションが一気に増えます。
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「ひな祭り」と書いた扇子の形の看板: 手に持つだけでイベント感が伝わります。
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お内裏様とお雛様の冠(かんむり): カチューシャに画用紙で作った冠をつけたもの。恥ずかしがる方もいますが、ノリの良い方は喜んでつけてくださいます。
安全・片付け楽々!現場が助かる設置&収納テクニック

イベントが終われば、待っているのは片付けです。
そしてまた来年の準備…。
現場のスタッフとしては、設置の簡単さや、片付けの手軽さ、そして保管のしやすさこそが、実は一番知りたい情報かもしれません。
最後に、現場の負担を劇的に減らす、プロ直伝のロジスティクス(物流・管理)テクニックをご紹介します。
画鋲は絶対NG!養生テープ+強力磁石の裏技
施設において、画鋲(押しピン)の使用は極力避けたいものです。
万が一落下して床に落ち、気付かずに利用者様が踏んでしまったり、認知症の方が誤飲してしまったりするリスクがあるからです。
かといって、セロハンテープだけでは重みで落ちてきてしまう…。
そんな時に役立つのが、「養生テープ」と「強力磁石(ネオジム磁石)」を使った固定方法です。
【準備するもの】
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養生テープ(壁紙に近い色、白や半透明がおすすめ)
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強力ネオジム磁石(100均で売っている小さいもの)
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強力両面テープ
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クリップ(ゼムクリップ)
【手順】
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壁側の処理: まず、壁に「養生テープ」を貼ります。これは壁紙を傷めないためのガードです。
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磁石の設置: 養生テープの上から、強力両面テープまたは瞬間接着剤で「ネオジム磁石」を貼り付けます。
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飾り側の処理: 飾りの裏側に、セロハンテープで「クリップ」または「もう一つの磁石」を貼り付けます。
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設置: あとは、壁の磁石に飾りをパチッとくっつけるだけ。
この方法なら、壁に穴を開けることなく、しかもかなり重い立体的な飾りでもガッチリと固定できます。
位置の微調整も数センチ単位で可能ですし、何より外す時は一瞬です。
私はこの方法を知ってから、飾り付けのストレスが半分以下になりました。
来年も使い回せる!模造紙を土台にして「分割収納」
壁に直接パーツを貼っていくと、撤去する時にバラバラになり、結局ゴミとして捨てることになってしまいがちです。
「あんなに時間をかけて作ったのに、もったいない…」と心が痛みますよね。
これを防ぐためには、壁に直接貼るのではなく、模造紙やプラダン(プラスチック段ボール)を土台にして、その上で作品を完成させてから、土台ごと壁に貼る方法がおすすめです。
大きな作品の場合は、土台を2〜3分割にして作っておきます。
【収納のコツ】
ひな祭りが終わったら、土台ごと壁から外し、作品を傷めないように大きめのゴミ袋(透明)でふんわりと包んで保管します。
段ボール箱に入れる場合は、箱の側面に「2026年ひな祭り飾り・壁面(右側パーツ)」のように、中身と設置場所を大きく書いておきましょう。
こうしておけば、来年は箱から出して壁に貼るだけ。準備時間がほぼゼロになります。
毎年少しずつ新しいパーツを書き足していけば、年々豪華になっていきますし、過去の作品を再利用できる安心感は、忙しい職員の心の余裕にも繋がります。
4週間前から始める!失敗しない準備スケジュール

最後に、直前になって慌てないための、理想的な準備スケジュールをご提案します。
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【4週間前(2月上旬)】企画・材料集め
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デザインを決定する(今年は「吊るし雛」でいこう、など)。
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倉庫にある廃材(新聞紙、余った布)を確認し、足りないものを100均へ買い出しに行く。
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模造紙をつなぎ合わせ、土台を作っておく。
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【3週間前(2月中旬)】パーツ制作開始(利用者様レク)
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毎日のレクの時間を使って、お花紙を丸めたり、新聞紙の芯を作ったりする。
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「何ができるかはお楽しみ」と期待感を高める。
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【2週間前(2月下旬)】組み立て・貼り付け
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作ったパーツを土台に貼り付けていく。
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完成に近づく様子を見て、利用者様のモチベーションを上げる。
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【1週間前(2月末)】壁面設置・微調整
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完成した土台を壁に設置する。
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写真を撮って確認し、寂しい部分があればパーツを追加する。
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撮影用の小道具を用意する。
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【3月3日 当日】ひな祭りイベント本番
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壁面の前で記念撮影会。
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飾りを見ながらの回想法クイズ大会。
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ひな祭りの飾り方!高齢者施設やデイサービス使える壁面まとめ

まとめ
- 原色ではなく和柄や千代紙を取り入れて、高齢者に敬意を表した品のある空間にする
- お花紙や新聞紙で立体感を出し、視力が弱い方でも楽しめるように工夫する
- 難しい人形制作は避け、吊るし雛や桃の花などのモチーフを活用して失敗を防ぐ
- 「丸める」「選ぶ」などの動作を意図的に組み込み、機能訓練としてのレクにする
- 車椅子の目線に合わせ、顔周りを明るくし、中央に余白を作ることで最高の写真を撮る
- 画鋲を使わず養生テープと磁石で固定し、土台ごと保管して来年の負担を減らす
いかがでしたでしょうか。
ひな祭りの壁面飾りは、単なる装飾ではありません。
それは、施設という閉ざされがちな空間に春を呼び込み、利用者様の記憶の扉を開き、職員と利用者様が「一緒に何かを作り上げる喜び」を分かち合うための大切なツールです。
「忙しいから」と諦めたり、「子供っぽいものでいいや」と妥協したりするのは、あまりにももったいないことです。
今回ご紹介したテクニックを使えば、時間はかけずに、でも愛情はたっぷりと込めた、素晴らしい飾りが必ず作れます。
完成した壁飾りの前で、利用者様が少女のような笑顔で「綺麗ねえ」と見上げてくれる。
その瞬間、準備の苦労はすべて報われます。
今年のひな祭りが、利用者様の輝く笑顔と、職員の皆様の達成感で溢れる、温かく素敵な一日になりますように。
春の訪れを、皆様と一緒に心待ちにしております。